Nadella氏、AI利用は独自データで二重払いと警告

二重支払いの警鐘

金銭と独自データの二重負担
修正が生む機関知の流出
顧客が競合を育てる構図

Nadellaの処方箋

データ所有権の保持
独自学習環境の構築
モデル切替の統合層

オープンソース台頭

オープンモデルが29%到達
オンプレ運用への移行加速

Microsoftのサティア・ナデラCEOは7月13日までに公開したブログ投稿で、AIを利用する企業が「知能に二度支払っている」と警告しました。企業はトークン利用料という金銭に加え、モデルを賢く使うために明かす独自の業務知識という、より価値ある対価を無自覚に差し出していると指摘します。この主張は、専有モデルを提供する大手AIラボが顧客の機密情報を吸い上げる「トロイの木馬」だとする、シリコンバレーの根深い懸念に足並みをそろえるものです。

ナデラ氏が最も危険視するのは、企業がモデルに自社事業の機微を教え込んでいる点です。「モデルはプロンプトエージェントの操作、とりわけ人間による修正という『排気(exhaust)』から学ぶ」と述べ、あらゆる訂正が組織固有のノウハウとして蒸留されると説明します。それは競合が決して買えない種類の知識であり、企業はそれを無償で手渡しているというわけです。

同氏はさらに、モデル提供者の姿勢を「二枚舌」だと批判します。AI企業が公開データを自由に学習へ使う一方で、自社モデルからの蒸留には制限的な条件を課す現状は皮肉だと指摘しました。実際にAnthropicは2月、中国オープンソースモデルClaudeへ大量のプロンプトを送り学習に流用したと非難しており、蒸留を巡る綱引きは業界の火種となっています。

では、どうすればよいのでしょうか。ナデラ氏の処方箋は、企業がプロンプトやフィードバックを含むデータの所有権を保持し、クラウド上に独自の学習環境を築くことです。加えて、特定ベンダーへの囲い込みを避けるため、複数モデルを容易に切り替えられる「オーケストレーション層」の整備を促しています。巨大クラウドを運営するMicrosoftのCEOらしい提案であり、その受け皿がAzureになりうる点も見逃せません。

言葉こそ使わないものの、その底流にあるのはオープンソースや自社環境での運用(オンプレ)への移行です。Solo.ioのイディット・レバインCEOは、専有モデルを試した顧客が「大手の約9割の性能を、はるかに低コストで自社管理できる」オープンモデルへ向かっていると証言します。VercelやOpenRouterでもオープンモデルへの流入が急増し、先月はVercelゲートウェイ経由トラフィックの29%をオープンモデルが占めました。

OpenAIAnthropicの両方に出資してきたMicrosoftのトップが、専有モデルへの警戒を公然と説いた意味は小さくありません。「知能を消費する中で、あなたは知能を創り出している。そして創り出したものはあなたに属すべきだ」というナデラ氏の言葉は、企業のAI戦略における主導権争いの号砲となりそうです。

オープンモデルがVercel処理量の3割に、価格は横ばい

オープンモデルの台頭

処理量の29%を占有、支出は4%未満
DeepSeekが22.6%で3位に浮上
GLM 5.2が2週間で急拡大

支出はフロンティア集中

Anthropicが支出の61%を独占
リスク用途で支出72%超
コーディング等はフロンティア維持

モダリティ別の勢力図

画像はGPT Imageが53%で首位
動画支出は中国勢が3分の2

Vercelは7月13日、AI GatewayのProduction Index最新版を公開しました。6月のデータでは、DeepSeekなどのオープンウェイトモデルが処理量全体の29%を占め、4月の11%から急伸したことが分かりました。トークン単価は5月に約20%上昇した後、6月は横ばいとなり、AI投資が拡大する一方で価格競争が進む構図が浮かびました。

オープンモデルの伸びをけん引したのはDeepSeekです。処理量の22.6%を握り、Googleを2ポイント差で追う3位に浮上しました。中国Z.aiがMITライセンスで公開したGLM 5.2も、6月中旬の提供開始から日次トークン量が約50倍に拡大し、月末には量ベースで11位に食い込んでいます。オープンモデルは平均単価の約10分の1で、企業の約8社に1社が本番環境で採用しています。

一方、支出は依然としてフロンティアモデルに集中しています。Anthropicはトークンの32%で支出の61%を占め、コーディングやバックオフィスなどミスが許されない用途では72%以上の支出を獲得しました。高頻度の作業は低コストモデルへ、高リスクの作業はフロンティアへと振り分ける「ルーティングの規律」が鮮明になっています。

モダリティ別ではリーダーが分かれます。画像生成OpenAIのGPT Imageが53%を占めて首位、GoogleNano Bananaが39%で続きました。動画ではxAIGrok Imagineが42%を生成した一方、支出はByteDanceのSeedanceなど中国勢が全体の約3分の2を握っています。

注目の新モデルも規制の影響を受けました。Anthropicが6月9日に公開したClaude Fable 5は、わずか4日でOpus 4.8の請求件数の22%に達する速さで採用が進みました。しかし6月12日に米国の輸出管理措置が発効し、Anthropicはアクセスを一時停止、月末まで利用できない状態が続きました。

防御側がAIハッカーを『文脈爆弾』で無力化

仕組み

ガードレール発動で攻撃AIが停止
機密情報に有害指示を混入
拒否機構の逆用が核心

検証結果

5モデル計152回の攻撃実験
管理者奪取57%→5%に低下
Opus 4.8は93%→0%

セキュリティ企業Tracebitの研究者は7月13日、AIを悪用したハッキングエージェントを無力化する新手法「コンテキスト爆弾」を公表しました。これはAWS上に保存されたパスワードや暗号鍵など機密情報の近くに、あえてプロンプトインジェクションを仕込む防御策です。攻撃側のLLMがこの文字列に触れると、開発元が設けた安全機構に反する指示と判断し、自ら動作を停止します。

仕組みの核心は、LLMに備わる拒否機構を逆手に取る点にあります。研究者は仕込む文字列として、吸入型の炭疽菌の作り方を尋ねる指示や、中国製モデル向けに1989年の天安門事件の『タンクマン』に言及させる指示を用いました。こうした禁止事項に一度触れると、LLMは既存の命令を放棄し、拒否を続けるようになります。

Tracebit共同創業者兼CEOのアンディ・スミス氏は、この技術を「コンテキスト爆弾」と名付けた理由を説明しています。「鋭く強い効果があり、エージェントがそこから立ち直るのは難しい。一度文脈に入れば拒否し続ける」と述べ、持続的な効果を強調しました。攻撃の道具だったプロンプトインジェクションを、防御側が逆用する点が最大の特徴です。

検証結果も有望です。研究者は模擬的なAWS環境で、Opus 4.8、Gemini 3.1 Pro、GLM 5.2、DeepSeek 4 Pro、Kimi 2.6の5モデルに定型の開発作業を指示し、計152回の攻撃を実行しました。おとりの機密情報に文字列を1つ仕込むだけで、エージェントが管理者権限を奪う割合は57%から5%へ、永続的な足場まで築く完全侵害は36%から1%へと大幅に低下しました。

特に最も高性能とされたOpus 4.8は、通常なら93%の確率で管理者権限を得ていたにもかかわらず、コンテキスト爆弾に直面すると一度も成功しませんでした。攻撃の武器を防御に転用するこの発想は、AIエージェント時代の新たな守り方を示すものと言えそうです。

AppleがOpenAIを提訴、営業秘密の盗用と主張

訴訟の概要

7月10日にOpenAIを提訴
41ページの訴状提出
数十件の機密ファイル持ち出し

手口と関係者

元社員が認証バグを悪用
退社数週間後もネットワーク侵入
元同僚が情報を橋渡し

OpenAIの狙い

面接で部品持参を要求
iPhoneに挑むAIハード計画

Appleは7月10日、AIハードウェア開発を巡り営業秘密を不正に盗用したとしてOpenAIを提訴しました。41ページに及ぶ訴状によると、元Appleエンジニア認証バグを悪用して退社後も社内ネットワークにアクセスし、未発表製品の技術仕様など数十件の機密ファイルを持ち出したとされます。Appleはこれらの情報がiPhoneに対抗するOpenAIハードウェア事業を支えていると主張し、使用差し止めを求めています。

中心人物とされるのは、8年間iPhoneの電気系エンジニアを務め2026年1月にOpenAIへ移籍したChang Liu氏です。訴状では、Liu氏が返却すべきApple支給端末を手元に残し、退社数週間後に当時未知だった認証脆弱性を突いてクラウド上のネットワークストレージへ侵入したとされます。「ネットワークストレージにアクセスできると分かった、超面白い」というメッセージも証拠として引用されました。

情報の受け渡しには元同僚のYu-Ting Peng氏が関与したとAppleは指摘します。Peng氏はLiu氏の退社後もAppleの機密プロジェクトや取引先情報を継続的に共有し、競合ハードの開発を後押ししたとされます。ただしPeng氏自身は今回の被告には含まれていません。

訴状はOpenAIの組織的な関与も強調しています。ハードウェア責任者でApple在籍24年のTang Tan氏が採用面接で候補者に実物の部品や試作品の持参を求めたほか、OpenAIが退職時の警備手続きを回避する方法を指南したとも主張しています。

AppleOpenAIの不正が「氷山の一角」であり、企業文化として上層部が主導していると批判しています。OpenAIは来年、iPhoneに挑むAIハードウェア端末の投入を計画しており、今回の訴訟はその事業の土台を揺るがしかねません。

Apple、iOS 27で刷新Siri AIを一般提供開始

日常操作の変化

ブラウザを開かないSiri先行操作
画面認識による予定追加
メールから6件の予定自動登録

現状の制約

対応は純正アプリのみ
開発者SDK対応待ち
対象はiPhone 15 Pro以降

今後の展望

OS全体に統合の設計
正式版は秋公開

Appleは7月13日、スマートフォン向けOS「iOS 27」の初の公開ベータを配信し、長く待たれてきた刷新版音声アシスタントSiri AI」を一般ユーザー向けに初めて開放しました。今回のSiri AIはオプトイン方式のベータとして提供され、利用にはApple純正の待機リスト登録が必要です。実機で試した米メディアの記者は、アプリを起点にせず「やりたいこと」を先に伝えるだけで端末が横断的に処理する体験を、将来像を垣間見るものと評価しています。

新しいSiri AIの核心は、操作の起点を変える点にあります。従来はアプリを開いて指示していた作業を、Siriが端末内の複数アプリやWeb情報を横断して代行します。ある記者は画面上のイベントページを見ながら出演順を尋ねると、SiriがページとWebを検索して正答を返し、ブラウザを開く回数が大きく減ったと述べています。

とりわけ有用なのが画面認識個人コンテキストの連携です。メールを解析して6件の予定をカレンダーに自動登録したり、端末を数日かけて索引化したうえでメッセージやカレンダーから今週の予定を抽出したりと、端末に深く組み込まれた強みを示します。SNSの投稿について「誰がどこで言ったのか」と尋ねるだけで、画面内容から文脈を補って出典を返す場面もありました。

一方で課題も残ります。現時点でSiri AIの新機能に対応するのはApple純正アプリに限られ、TelegramやGmailなど外部アプリのデータには触れられません。対応には開発者がアプリに「エンティティ」と「インテント」を実装する必要がありますが、SDKがベータの間は反映できず、実際の展開は秋の正式版以降になります。

利用にはiPhone 15 Pro以降というハードウェア要件もあり、iOS 27を入れても自動で使えるわけではありません。Androidの「Gemini」が先行して同種の体験を提供してきた点を指摘する声もありますが、数百万規模の米国iPhoneユーザーにとっては端末との関わり方を変える転機になり得ます。記者らは総じて、完成度は道半ばながら、Appleがようやく実用的なSiriの土台を築いたと見ています。

ACRouter、AIモデル選択を自己学習し費用2.6倍削減

静的ルーティングの限界

入力のみ評価し実行結果を見ない
環境変化や新モデルで陳腐化

自己進化する仕組み

C-A-Fループで成否を記憶
0.8Bの軽量アダプター採用
検証可能なタスクで真価発揮

コスト性能の実証

Opus固定比費用2.6倍削減
パレート最前線を達成
Apache 2.0でOSS公開

AIモデルのルーティング(振り分け)を静的な分類問題ではなく、記憶を蓄える動的なエージェントとして扱う新しいオープンソースフレームワーク「Agent-as-a-Router」が2026年7月13日に報じられました。研究チームはその具体実装であるACRouterを公開し、常に高価な最上位モデルへ振り分ける方式と比べ、コーディング課題でコストを2.6倍削減したと発表しています。巨大モデルの学習や無数のルールを書く必要なく、稼働しながら自己最適化する点が特徴です。

従来のルーティングは、キーワードで振り分けるヒューリスティックか、過去データで学習した静的分類器が主流でした。いずれも入力テキストしか見ず、モデルが実際に課題を解けたかを観測しないため、複雑な事例では当て推量になってしまいます。研究チームはこれを情報欠損と呼び、環境変化や新モデルの登場で精度が急落する弱点を指摘します。

ACRouterの核心はContext-Action-Feedback(C-A-F)ループです。新しいプロンプトが届くと、過去の類似課題で各モデルが成功したか失敗したかを記憶から検索し、最適なモデルを選んで実行します。その結果を成功・失敗の信号として記憶に書き戻すため、運用しながら学習を続けられる仕組みになっています。

システムはOrchestrator、Verifier、Memoryの3要素で構成されます。VerifierはPythonの実行環境やデータベースに接続し、生成されたコードやクエリが実際に動くかを検証して、確かなフィードバックを得ます。制御役のOrchestratorは巨大なモデルではなくQwen3.5ベースの0.8Bアダプターで、手元の端末に自前で載せられる軽量さです。

評価では約1万課題からなるCodeRouterBenchを用い、8つの最先端モデルで検証しました。単一モデルでは全分野を支配できず、平均首位のClaude Opus 4.6もアルゴリズム設計や検証コード生成では他モデルに逆転されています。ACRouterはコストと性能のパレート最前線に位置し、分布内テストで費用は13.21ドルと、Opus固定の34.02ドルを大きく下回りました。

ただし万能ではありません。成否が明確に判定できるコーディングやデータ検索では威力を発揮する一方、創作のような主観的で検証しにくい領域には向かないと研究チームは注意を促します。コードはGitHubで、モデル重みはHugging FaceApache 2.0ライセンスのもと公開され、Claude CodeCodex、OpenCodeと連携できます。

MITのAIエージェント、ロボット訓練の仮想空間を自動生成

三つのAIエージェント

設計・批評・統括の三役分担
最新VLM「GPT-5.2」を活用
対話反復で3D空間を生成

精細な仮想空間

従来比6倍の物体密度
1,300超の多様なシーン
開閉できる家具まで再現

訓練効率化

人間評価と99%超一致
生成に数時間かかる課題

MIT CSAILとトヨタ・リサーチ・インスティテュートの研究チームは、ロボット訓練用の仮想空間を自動生成するAIシステム「SceneSmith」を開発しました。三つのAIエージェントが連携し、レストランや寝室、ホテルといった3D空間を実物さながらに構築します。成果は先週開かれた機械学習の国際会議ICMLで発表されました。ロボット学習の最大の壁だったデータ不足を、シミュレーションで補う狙いです。

システムの核となるのは、役割の異なる三つのエージェントです。まず「デザイナー」が空間の要素を生成し、「クリティック」が現実的かどうかを助言、「オーケストレーター」が両者のやり取りを取り仕切って完成を判断します。各エージェントは最新の視覚言語モデル(VLM)GPT-5.2を呼び出し、空間の常識を踏まえて設計を進めます。

生成される空間は、従来手法より最大6倍の物体が置かれ、細部まで作り込まれます。研究チームは1,300を超えるシーンを作成し、事前の指示になかった創造的な配置も自動で生まれたといいます。開閉できるキャビネットなど、これまでの手法が苦手としていた可動物体も再現できる点が特徴です。

こうした豊富な仮想環境は、実機を動かす前にロボットの行動計画を検証する場になります。VLMエージェントが各試行を評価したところ、その判定は人間の評価と99%以上一致しました。200人を超えるユーザー調査でも、9割超が他手法より現実的だと答えています。

課題も残ります。各物体を丁寧に精査するため、一つの空間を作るのに数時間かかる点です。研究チームは計算資源を増やせば効率が大きく改善するとみており、スポンジのような変形する物体への対応も視野に入れています。

世界モデル、LLM超えるAIの次なる主戦場に

LLMを超える新潮流

LLMの限界への回答候補
巨額の資金と研究が集中

用途起点のアプローチ

ロボティクスや研究に応用
資産生成での実装模索
用途から逆算する開発姿勢

専門家と巨額投資

MITRunwayの実践者が言及
LeCunは延長論を「ナンセンス」と批判

米技術メディアのArsは、大規模言語モデル(LLM)に続くAIの新カテゴリーとして注目される「世界モデル」の可能性と限界を、専門家3人への取材をもとに検証しました。世界モデルは言語ではなく物理世界そのものを、あるいはその有用な近似をシミュレーションするAIの基盤づくりを目指す技術です。過去1年で関連の発表が相次いでおり、今後さらに動きが広がると見込まれています。

取材に応じたのは、MITのヴィンセント・シッツマン氏、Runwayのアナスタシス・ゲルマニディス氏、World Labsのベン・ミルデンホール氏の3人です。彼らへの取材から浮かび上がったのは、LLMと世界モデルの開発アプローチの明確な違いでした。

LLMはチャットというインターフェースから出発し、後から用途を探しました。一方で世界モデルの主要プレーヤーは逆方向で、ロボティクスや研究、資産生成といった具体的な用途から着手しています。ただし、最終的にインターフェースやシステム、ツールがどのような形になるかは依然として不透明です。

世界モデルは、LLMの限界に対する一つの答えとしても位置づけられています。元MetaのチーフAIサイエンティストであるヤン・ルカン氏は、「LLMの能力を拡張して人間レベルの知能に到達させるという考えは、完全なナンセンスだ」と語りました。この見解は一部で異端視されつつも、実際には分野内の相当数を代弁するものだといいます。

アーキテクチャや性能向上の見込みという点で、世界モデルとLLMには多くの共通点もあります。それでも、物理世界を理解するAIへの期待と投資は着実に高まっており、次の技術的フロンティアとして今後の展開が注目されます。

MIT、AIの児童性的虐待画像の生成能力を生成せずに検出

深刻化する課題

AI生成CSAM通報が1年で20倍超
生成テスト自体が違法というジレンマ

非生成型の検出手法

モデル内部の隠れ表現を解析
出力を生成せず有害能力を推定
CSAM生成モデルを100%検出

意義と今後

安価で拡張可能な監査手法
プラットフォームでの事前排除

マサチューセッツ工科大(MIT)の研究チームは7月13日、児童保護団体Thornと共同で、AIモデルが違法な児童性的虐待資料(CSAM)を生成できるかどうかを、実際に画像を生成せずに判定する新たな監査手法を発表しました。モデル内部の隠れ表現を解析することで、有害な画像生成に特化したモデルを高精度で見抜けるのが特徴です。試験ではCSAM生成用に改変されたモデルを100%の精度で特定しました。

背景には、生成AIの急速な普及があります。誰でも改変できるオープンソースモデルが悪用され、全米行方不明・被搾取児童センターへのAI生成CSAMの通報は2024年の6万7000件から2025年には150万件超へと急増しました。しかし米国では意図に関わらずCSAMの生成自体が違法なため、従来の「生成して出力を確認する」監査手法が使えないという深刻なジレンマがありました。

研究チームが着目したのは、モデルを効率的に特化させるLoRA(低ランク適応)という微調整技術がもたらす内部の変化です。「Gaussian probing(ガウス探査)」と呼ぶ手法で、ランダムなデータをモデルに入力し、多層構造の内部でどう処理されるかを解析します。出力を最後まで生成しないため、有害画像を作り出すことなく能力を推定できる点が画期的です。

3種類のモデルの改変版で検証したところ、CSAM生成用に調整されたモデルを100%正確に識別できました。手法は安価で拡張性が高く、毎月何千もの改変モデルが公開される現状にも対応できます。ホスティング事業者はこれを使い、危険なモデルにフラグを立てて削除したり、アップロード自体を防いだりできます。

筆頭著者のMIT大学院生Vinith Suriyakumar氏は「これまで測定手段がなく、悪用される大きな死角だった。今回、深刻な悪影響を及ぼすAI安全性の問題に対処できる」と語ります。研究チームは今後、より多くのモデルで検証を進め、微調整前の基盤モデルの段階で有害な能力を検出できるかも探る方針です。

X Square Robotが統合スタックで家庭ロボット公開

データ設計

単位は軌跡でなく相互作用
実機再生で品質検証
ロボット不要で20分の1コスト

モデル構成

事象単位の世界モデルWALL-WM
微調整前に実機動作
意味を持つ行動トークン

事業と公開

評価額29億ドル
全スタックをオープン公開

中国の身体性AI企業X Square Robotが、家庭用ロボットの実用化に向けて独自の統合スタックを打ち出しました。同社は、ロボットが学ぶデータ、物理世界の変化を予測する世界モデル、実行可能な行動を生む行動モデルを一体で設計し、これらをオープンソースで公開する方針を示しています。汎用ロボットには大規模言語モデルのような確立した「レシピ」がまだなく、その答えを統合スタックに求めた点が特徴です。

同社が最も重視するのは、パラメータ数ではなく相互作用データの質とコストです。装着型のリグで人の作業を記録する独自の収集システムを構築し、記録した軌跡を実機で再生して、実際に課題を達成したものだけを有効とする物理再生の検証工程を取り入れました。ロボット不要のデータで事前学習し、少量の実機データで補うことで、すべて実機で集める場合の約20分の1のコストで同等性能に達すると報告しています。

世界モデルWALL-WMは、固定長の時間窓ではなく、把持や配置といった意味を持つ行動事象を単位に据えた点が独自です。長期的な推論に向く可変長の「事象モード」と、制御に必要な定常出力を返す「固定長モード」を併せ持ちます。既存の大規模動画モデルの知識を壊さずに行動ネットワークを重ねる設計により、予測性と実行可能な制御を両立させています。

行動モデルWall-OSS-0.5には、事前学習した時点で微調整前でも実機で動くべきだという要件を課しています。離散的な行動トークン、言語との対応付け、連続的な行動生成という3つの目標を同時に学習させる方式です。さらに、動作の意図を上位コードが表すX-Tokenizerにより、再調整なしで複数のロボット間へ転用できる行動表現を実現しています。

投資家の期待も高まっており、同社の評価額200億元(約29億ドル)を超えました。データ基盤や基盤モデル、拡張可能な学習システムを長期的な差別化要因とみる見方が広がっています。ただし現在の成果の多くは自社のロボットベンチマークで測ったもので、コード公開後に外部で再現・検証されて初めて真価が問われます。

技術面接でAI攻防が激化、企業と候補者が対抗

AI対AIの構図

候補者が面接支援AIを使用
企業はAI検知ツールで対抗
レイオフ下のいたちごっこ
実力より最適化の競争

検知の限界と容認派

誤検知で優秀者を排除
採用ツールに人種バイアス
Metaは面接でのAI利用容認
評価軸は推論と真正性

ソフトウェア技術者の採用面接が、AIをめぐる攻防の場になっています。IEEE Spectrumが2026年7月13日に報じたところによると、リモート技術面接で一部の候補者が回答をリアルタイム提案する面接支援AIを使い、企業側はAI利用を検知するツールで対抗しています。専門家はこの構図を、勝者なき「いたちごっこ」と表現します。

背景にはAIによるテック業界の大量レイオフと、求人数を上回る応募者があります。採用戦略家のタチアナ・テッポエワ氏は、パターンに合わないと落とされ続けた候補者が、システムを出し抜くためにAIを使わざるを得なくなると指摘します。企業がAI履歴書スクリーナーで応募を大量選別し、候補者がその対抗策としてAIを使う流れも生まれています。

面接支援AIのFinal Round AIやInterview Coderは、音声を処理して回答やコードを瞬時に生成し、画面上に検知されない形で重ねられると称します。一方でMetaエンジニアらが創業したGingerは、視線の動きや応答の遅延、タブの切り替え、AIらしい話し方といった兆候を検知し、AI利用者を洗い出します。まさにAI対AIの応酬です。

しかし検知の精度は完璧ではありません。CalTek Staffingのアーチー・ペイン氏は、優秀な候補者が誤検知で不合格になる事例を挙げます。スタンフォード大の研究では、340万人の応募者を追跡した結果、AI採用ツールがアジア系と黒人の応募者に不利な影響を与える証拠が見つかりました。

そこで検知ではなく、面接でのAI利用を容認する企業も現れています。MetaやFactoryは、候補者が1時間でAIコーディングエージェントを使い実務同様の課題に取り組む形式を採り、結果ではなく戦略や計画、AIへの指示、デバッグの説明力で評価します。テストの合格数や完成度は採点しないといいます。

共通するのは、AIに頼り切る弱い候補者と、AIで速度を上げつつ設計判断を自ら担う強い候補者を見分ける狙いです。「AIは使う人の判断力次第」とFactoryのバリン・ネア氏は語ります。専門家は、コードのウォークスルーや設計議論を交えた協働型の評価こそ真の思考力を映すとし、最終的な解に責任を持てる人材が問われる時代を示唆します。

Hermes開発のNous、15億ドル評価で資金調達

資金調達の概要

Robot Ventures主導の新ラウンド
15億ドルの企業評価額
最低7500万ドルを調達へ
USVなど著名投資家が参加

Hermesの特徴

オープンソースのAIエージェント
GitHub21万スター獲得
月20〜200ドルのクラウド

オープンソースのAIエージェント「Hermes」を開発する米新興企業Nous Researchが、15億ドル(約2250億円)の企業評価額で新たな資金調達を進めていることが、2026年7月13日に明らかになりました。事情を知る関係者3人によると、同社はRobot Venturesが主導しUSVなど著名投資家が参加するラウンドで、最低7500万ドルを調達する見通しです。投資家からの関心は非常に高かったとされています。

Nous Researchは2023年にJeffrey Quesnelle氏らによって設立されました。今回のラウンド前までに、ParadigmやRobot Ventures、著名投資家Balaji Srinivasan氏などから総額7000万ドルを調達済みです。今回の調達が実現すれば、企業価値は一気に切り上がることになります。

看板製品のHermesは、PC上でローカルに動作し、ユーザーに代わってタスクを実行するAIエージェントです。先行して話題を集めた「OpenClaw」の対抗馬として投入され、Web検索コーディング画像認識といった「スキル」を標準搭載する点が特徴です。利用状況から自動的に学習し、人手を介さず新たなスキルを構築する設計になっています。

HermesはTelegramやDiscordといったアプリ経由でエージェントと対話でき、24時間遠隔で自律的に動かせる点が支持を集めています。オープンソースとして公開され、GitHubでは約21万4000のスター、4万近いフォークを獲得しました。自前の環境構築が不要なクラウド版も、月20〜200ドルの有料プランで提供されています。

関係者によれば、今回の資金はHermesの製品群拡充とビジネスモデルの強化に充てられる見通しです。急拡大するAIエージェント市場で、オープンソース戦略を武器にどこまで存在感を高められるかが今後の焦点となります。

動画生成のPixVerse、4.4億ドル調達で評価額20億ドル超え

資金調達

総額4.39億ドルを調達
企業価値20億ドル突破
アリババなど新規出資

製品と強み

登録ユーザー1.5億人超
強みはデータのラベリング

市場環境

世界モデルと海外展開を強化
動画生成市場で競争激化

シンガポール拠点の動画生成スタートアップPixVerseは7月13日、シリーズCの延長ラウンドを完了し、同ラウンドで総額4.39億ドルを調達したと発表しました。今回の資金調達により、同社の企業価値は20億ドルを突破しました。調達資金は世界モデル事業の拡大と、各地域での顧客開拓に充てる方針です。

シリーズCの初回ラウンドは3月にCDHインベストメントの主導で完了し、金額は非公開ながら約3億ドルと報じられていました。今回の延長ラウンドにはアリババやミラエアセットなど複数の新規投資家が参加し、iGlobe Partnersなど既存投資家も出資を継続しています。

PixVerseは2023年、ByteDanceでコンピュータビジョンを手がけたWang Changhu氏と、投資会社出身のJaden Xie氏が創業しました。消費者・API向けのVシリーズ、映像制作向けのCシリーズ、ゲーム開発向けの世界モデルRシリーズを提供し、最大4K解像度音声付きの動画を生成できます。

消費者向け製品の登録ユーザーは1億5000万人を超え、月間アクティブユーザーは1500万人に達します。Xie氏は競争力の源泉について、データそのものではなくラベリングの精度にあると強調し、共同創業者ByteDanceTikTokの推薦アルゴリズムを支えた技術が生きていると説明しました。

Xie氏は、OpenAISora 2の停止で市場から撤退し、MetaやTencentも高品質な動画モデルを出せていないと指摘します。一方で市場は過熱しており、ByteDanceのSeedanceやKling AI、西側のRunwayMidjourney、Lumaなど競合がひしめきます。同社は今年、新型Vシリーズと世界モデルの新版を投入し、アリババとの連携で企業向け展開を世界へ広げる計画です。

宇宙データセンター実現性巡りAltman氏とMusk氏応酬

SNSでの応酬

Altman氏がMusk氏を痛烈批判
「詐欺師」呼ばわりへの反論
短期実現を売り込む姿勢を指摘

専門家の見方

軌道データセンター当面非現実的
安価なロケットが未整備
衛星の量産体制が課題
本格化は2030年代の見通し

OpenAISam Altman氏とSpaceXElon Musk氏が週末、SNS上で激しい言葉を応酬しました。Musk氏がAltman氏を「詐欺師」と非難したのに対し、Altman氏は「短期の宇宙データセンターを株式市場の投資家に売り込んでいるのはあなただ」と切り返しました。この応酬は、宇宙コンピューティング事業の理想と現実の隔たりに改めて注目を集めました。

SpaceXは、AI推論処理を担う軌道上データセンター群の打ち上げ構想を掲げ、これが2兆ドルの企業価値を支える主要な原動力となっています。強気の分析筋は、その処理能力がSpaceXAIのモデルを動かし、軌道上のクラウド基盤になり得ると期待を寄せています。しかしAltman氏の指摘は、多くの専門家が結論づけながらも投資家が見落としている点を突いたものです。

他の宇宙データセンター新興企業の起業家GoogleのOrbital Compute開発チーム、そして採算を試算した技術者。いずれに聞いても答えは同じです。大幅に安価なロケットと、高性能な衛星を大量かつ低コストで量産する体制が整うまで、この事業が大きな成果を上げることはないという見解です。

Musk氏の切り札は巨大ロケット「Starship」で、13回目の試験飛行が7月16日にも予定されています。ただ両段の回収に成功しても、実用的な再使用飛行の実現にはなお数年を要する見通しです。しかもSpaceXはNASA向けの契約や自社のStarlink網構築を優先するため、データセンター向けの打ち上げは後回しになる公算が大きいのです。

SpaceXIPOの説明会で、Starshipが近い将来には完全再使用に至らず、打ち上げごとに第2段を使い捨てる必要があると認めました。これは経済的な宇宙データセンターの前提を崩す要因です。Musk氏は「来年から飛ばし始める」と反論しますが、大量に打ち上げ製造できる時期という本質的な問いは、2030年代まで残るとみられます。

Anthropic、Claudeをインドでルピー価格化

価格の現地化

月2000ルピーのPro価格
米国より高い設定
現地税込みで表示
UPI決済は未対応

インド重視の背景

世界2位のClaude市場
Bengaluruに拠点開設
Infosysなどと提携

AnthropicはAIアシスタントClaude」の料金を、米国に次ぐ第2の市場であるインド向けに現地通貨建てで提示し始めました。同社のサイトやアプリで一部ユーザーにルピー建て価格が表示され始めており、ドル建てと為替換算による利用の障壁を下げる狙いがあります。インドは世界のClaude利用の5.8%を占め、米国に次ぐ規模へと成長しています。

具体的には、Claude Proが年払い時に月2,000ルピー(約21ドル)で、米国の月17ドルより高く設定されています。上位のMaxは月1万1,999ルピー(約125ドル、米国は100ドル)、チームプランは1席あたり月2,399ルピー(約25ドル、米国は20ドル)です。これらのインド価格には現地の税金が含まれており、モバイルアプリとサイトで金額は若干異なります。

一方で、Anthropicインドで広く使われる即時決済網UPIでの支払いにはまだ対応していません。ユーザーはカードやAppleGoogleのアプリ内課金を利用する必要があります。8月にUPI対応でルピー価格を導入したOpenAIとは対照的な形です。

今回の動きは、Anthropicによるインド重視の姿勢を反映しています。同社は2月にベンガルールに拠点を開設し、1月には元マイクロソフト・インディア幹部のイリナ・ゴーシュ氏を現地事業の責任者に任命しました。さらにインドのIT大手インフォシスやタタ・コンサルタンシー・サービシズ(TCS)と提携し、企業向けAIの展開拡大を進めています。

ただし拡大には課題も残ります。6月にはFable 5とMythos 5モデルへの米国外からのアクセスが一時停止され、一部のインド開発者が代替を検討する事態も起きました。価格に敏感な市場で広範な利用を有料契約へと転換できるかが、今後の焦点となります。

MIT、学生が自治体のサイバー防衛を無償支援

クリニックの仕組み

2019年発足の無償支援講座
40件超脆弱性評価実績
New England自治体・医療機関が対象

人こそ最大の防御線

最大の攻撃経路は人間
技術偏重せず組織力を重視
AIが攻撃自体を実行する脅威

広がるモデル

修了生120人超
MOOCに数万人が受講

MITの都市研究・計画学科(DUSP)は、学生が自治体や医療機関のサイバー防衛を無償で支援する「サイバーセキュリティ・クリニック」を2019年に立ち上げました。講師のJungwoo Chun氏とLawrence Susskind教授が主導し、ほぼ毎学期開講しています。法律や医療のクリニックと同様に、学生の実地訓練と、資金の乏しい地域への無償サービスを兼ねる仕組みで、これまでに40件超の脆弱性評価を提供してきました。

背景には、深刻化する公共機関へのサイバー攻撃があります。2019年にはメリーランド州ボルチモア市がランサムウェアで多くの重要ファイルを凍結され、復旧費用は数百万ドルに膨らみました。FBIの集計では2025年に米国民を狙う攻撃は1日平均2,765件に達し、Comparitechによると2018年から2024年にかけて米政府機関への攻撃は525件、停止に伴う損失は推定10億9,000万ドルに上ります。

小規模な自治体や病院は重要インフラの入り口でありながら、専門人材を自前で抱える余裕がありません。そこでChun氏とSusskind教授が掲げるのが「防御的ソーシャルエンジニアリング」という考え方です。技術対策も重視しつつ、「最大の攻撃経路は依然として人間だ」として、担当者が正しい選択をできる組織づくりを重視します。

生成AIの進化は攻撃側にも新たな武器を与えており、Chun氏は「今やAIは脆弱性を特定するだけでなく、攻撃自体を実行できる」と警戒します。学生はまず4週間で認証試験に備え、23の主要リスク領域や難しい依頼者対応を学んだうえで、チームで顧客を担当し、脆弱性評価と改善提案をまとめた報告書を作成します。

推奨される対策の多くは、機器やソフトの棚卸し、定期的なパッチ適用とバックアップ、多要素認証、従業員教育、攻撃対応計画の準備など、いずれも低コストです。Susskind教授は「どれも高くつかないが、組み合わせれば被害の8割以上を防げるだろう」と話します。

モデルは着実に広がっています。MITでの修了生は120人を超え、認証用のオンライン講座はMITxの公開講座として数万人が受講しました。2021年にはUC Berkeley、Indiana大学、Alabama大学と共同でクリニックの連合組織を設立し、加盟機関は61に増えています。

WazeがGemini搭載の新AI機能、経路を個人最適化

Gemini新機能

Geminiで目的地を音声検索
会話形式で地図更新を報告

経路の個人最適化

走行履歴で経路を提案
高速道路優先など好み反映
音声控えるless chatty

バイク向け対応

AI活用バイクモード
路面の危険箇所を通知
中南米・アジア7カ国で展開

米グーグル傘下のナビアプリWazeは7月13日、AI関連の新機能を相次いで発表しました。複数の機能に同社の生成AI「Gemini」を組み込み、目的地検索や地図更新を音声の会話でこなせるようにします。グーグルが全製品でGemini統合を進める一環で、Appleマップなど競合への対抗も狙います。

目玉の一つが個人最適化ナビです。Wazeは利用者の過去の走行履歴と、都市の交通パターンに関する独自データを組み合わせ、好みに合う経路を優先的に提示します。高速道路を好むユーザーには高速ルートが先に表示され、不要なら設定でオフにでき、AndroidiOSで世界展開が始まっています。

Geminiを使った機能は主に二つあります。一つは音声で「今開いているカフェを探して」などと尋ねると候補を提示する目的地検索で、まずベータ版として世界のコミュニティに提供します。もう一つは会話形式の報告機能で、渋滞に加え道路閉鎖や古い住所といった地図の更新も話しかけるだけで編集者に伝えられます。

二輪車向けのバイクモードも新設しました。AIで二輪特有の抜け道や規制を反映し、より正確な到着予想時刻を示すほか、穴やスピードバンプなどライダーに危険な箇所を表示します。アルゼンチンやブラジル、メキシコ、マレーシア、フィリピンなど中南米・東南アジアの7カ国で提供を始め、対象国を順次広げる方針です。

AIを使わない改善もあります。音声案内を減らす「less chattyモード」では、危険や曲がり角の通知は残しつつ発話を最小限に抑え、音楽やポッドキャストに集中できます。グーグルはこれまでWazeへの本格的なAI導入を控えてきましたが、今回の刷新は同社がナビ事業でGemini活用を一段と強める姿勢を示すものといえます。

George Hotz、利用者整合AIを訴え安全論争が再燃

Hotzの主張

ユーザー整合AIを提唱
中央管理型AIへの反発
AIをになぞらえる主張
急速な自己改良シナリオに懐疑

論争の背景と反論

AI 2040の開発減速案が発端
自由か秩序かの二項対立
社会的相互依存の軽視への批判
ローカルAIへの技術的期待

米自動運転企業Comma AI創業者でジェイルブレイカーのGeorge Hotz氏が7月11日、自身のブログでAIの安全性をめぐる持論を公開しました。AI Futures Projectが示した開発減速案「AI 2040: Plan A」への反論として、中央で管理する整合ではなく、利用者の利益に厳密に沿うローカル制御型AIこそ望ましいと主張し、業界の整合論争を再燃させています。

Hotz氏はまず、AIが急速に超人的能力を獲得するというfast-takeoffシナリオに懐疑的な立場を示します。そのうえで、ClaudeChatGPTのように中央集権的に運用される現在の主流サービスを批判し、利用者一人ひとりに整合した個人向けAIへの移行を訴えています。

こうした分散型の発想自体は、大規模モデルのホスティングコストが下がるにつれ現実味を増すという指摘には一定の説得力があります。記事はDIY的な実験プロジェクト「OpenClaw」の面白さにも触れ、こうした方向性を評価しています。

一方でHotz氏の主張は挑発的な領域にも踏み込みます。彼は利用者整合AIをにたとえ、求められれば配偶者殺害の計画立案や違法薬物製造の支援すら拒まないのが真に整合したAIだと述べ、この原則のためなら死ねるとまで言い切りました。「自由のある世界か、そうでないか」という二者択一を突きつけています。

これに対し記事の筆者は、社会や市場は個々の欲求を相互依存のネットワークへと束ね、説明責任の仕組みで均衡を保っていると反論します。大衆向け製品を提供する側は、まだ殺されていない配偶者を含む社会全体の利益を考慮すべきだと指摘しました。

つまりHotz氏が謳歌する自由も、集団の営みが生み出した可能性の空間の上に成り立っているという見方です。それでも、企業と渡り合ってくれる個人向けローカルAIへの期待自体は否定できないと筆者は結んでいます。

Uber、旅行事業とAIで成長狙うも万能アプリ化は否定

旅行事業への拡大

ホテル予約でExpediaと提携
都市外移動が年15億件
会員数5100万のUber One

ロボタクシー戦略

Waymoは協業相手かつ競合
Phoenix終了しAustin等で拡大
生成AI企業へデータ販売

AIの新機能

音声での配車リクエスト
万能アプリ化には慎重姿勢

配車大手Uberの最高製品責任者(CPO)を務めるSachin Kansal氏は、TechCrunchとのインタビューで、同社がライドシェアとフードデリバリーに次ぐ「第三の柱」として旅行事業を育てる方針を明らかにしました。今年はExpediaと提携したホテル予約や買い物代行機能を投入し、年間15億件に上る都市外での利用を取り込む狙いです。一方で同氏は、あらゆる需要に応える「万能アプリ」を目指すわけではないと強調しました。

金融サービスについては、ドライバーや配達員向けのデビットカード「Uber Proカード」を軸に展開し、消費者向けには会員制度と連動した「Uberクレジット」を提供しています。会員プログラム「Uber One」の会員数は5100万人に達し、予約全体の約半分を占めるまでに成長しました。Kansal氏は、会員化によって既存事業の利用頻度が高まるだけでなく、配達のみの利用者が移動も使い始めるといった相乗効果が出ていると説明します。

自動運転を巡っては、パートナーであるWaymoとの関係が複雑さを増しています。UberはPhoenixでの試験運用を終了する一方、AustinやAtlantaでは数百台規模へと拡大しており、人間のドライバーと自動運転車を同一都市で併用するハイブリッド網を志向しています。同社はL4自動運転の開発競争には加わらず、複数の事業者と協業できる基盤づくりに徹する構えです。

新設した「AV Labs」では、センサーを搭載した数百台の車両で数百万マイル分の走行データを収集し、稀な事例(ロングテール)への対応力を高めます。また同社は、稼働者の基盤を活用したデータのラベリングを通じて、生成AI企業へデータを販売する新たな収益源にも強気の姿勢を見せます。ただしKansal氏は、走行中の会話を録音することはないと明言しました。

AIはすでに利用者が実感できる形で登場しています。ドライバー向けの「アシスタント」は需要の高い地域への移動を助言し、Uber Eatsでは「牛乳、卵、パン」と伝えるだけでカートを作る機能を提供します。配車でも音声によるリクエストが可能になり、Kansal氏は旅行全体を計画・予約する「エージェント型」のUberが将来的な方向性になるとの見方を示しました。

Google Ads、動画キャンペーン群で到達頻度を最適化

新機能の概要

動画キャンペーン群を全世界で提供
複数キャンペーンの到達頻度を統合管理
単一目標で運用を簡素化

効果とデータ

週2.7回が最適頻度
ROIを19%押し上げ
ユニークリーチと効率の向上

今後の展開

統合レポートで指標を一元把握
DV360へ近日拡大

米グーグルは、YouTube広告の到達回数と頻度を最適化する「動画キャンペーン群」機能を、Google Ads上で全世界に提供開始しました。複数の動画キャンペーンをまたいで到達と頻度を調整できるようになり、広告主は最適な接触頻度の目標を効率的に達成できます。同社のMeridian MMM調査では週2.7回の接触が最適とされ、この頻度に近づけることでROIが19%向上したといいます。

新機能の最大の利点は、運用管理の簡素化です。従来は各キャンペーンごとに設定していた到達・頻度の目標を、単一のゴールとしてまとめて指定できます。予算やクリエイティブといった個別のキャンペーン設定は維持したまま、全体の接触設計だけを一元的に管理できる点が特徴です。

配信面でも効果が期待されます。複数キャンペーン間で配信を協調させることで、重複を抑えてユニークリーチを広げ、頻度の効率を高められます。これにより、同じ予算でもより多くのユーザーへ適切な回数だけ届けやすくなります。

効果測定の面では、キャンペーン群の単位で主要指標を一望できる統合レポートが用意されました。ユニークリーチや週平均インプレッションなどを横断的に確認でき、統合的な戦略が成果へどう結びついているかを把握できます。

グーグルは今後、この仕組みをDisplay & Video 360にも近日中に拡大する方針です。複数のYouTube広告枠にまたがる到達・頻度の協調が可能になる見込みで、大規模に動画広告を運用する広告主にとって選択肢が広がります。