NYU研究者、拡散数は文化の指標にならずと指摘
拡散数の限界
参加としての賭け
知能偏重への懐疑
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ニューヨーク大学でサイバー民族誌とメディア理論を研究するルビー・テロ氏が、米WIREDのインタビューで、ネット上のバイラル(拡散)はもはや文化を測る指標として機能しないと指摘しました。拡散の数値そのものが目的化し、コンテンツ本来の価値と切り離されたためです。同氏の著書『In Defense of Being-On-Line』は今秋刊行される予定です。
背景にあるのは、英経済学者チャールズ・グッドハート氏の名を冠したグッドハートの法則です。測定基準が目標に変わった瞬間、その基準は良い測定手段ではなくなるという指摘で、テロ氏は文化の領域がすでにこの段階に入っていると見ます。再生数を狙って設計されたコンテンツは、数字を集めても文化には浸透しません。
同氏はインターネットが「バルカン化」し、利用者一人ひとりがデジタルの島に暮らす状態になったと説明します。実際にInstagramとTikTokで100万回以上再生された約1000本の動画を調べたところ、否定的な内容は約25%にとどまりました。恋愛疲れという物語も、書き手の側で誇張されている可能性があると同氏は語ります。
予測市場の広がりについても、同氏は金融商品ではなく参加の手段だと捉えます。2020年から2024年にかけてミームコインを売買する若い男性を追った調査では、取引はグループチャットで共同で行われ、損失も分かち合われていました。賭けの本質は儲けではなく、文化への近さを買う行為だという見方です。
AIについては、世界を終わらせることはないと予測します。世界の課題の多くは知能ではなく、大人数の協調と合意形成が制約になっているためです。知能を最も強力なものとみなす発想は、優生学の祖フランシス・ゴルトンの信念とも重なり、哲学的に危ういと同氏は警告します。
その過程で切り捨てられるのが、感情的知性や身体的知性、芸術的知性といった数値化されない知性だと同氏は述べます。技術が一歩進むたびに何かが置き去りにされるという、フランスの哲学者ジルベール・シモンドンの議論を引きます。計測できる指標だけで人や事業を測っていないか、問い直す価値はありそうです。