Mistral、欧州AI計算基盤を2030年に1ギガワットへ

1ギガワット構想

2027年末に200メガワット確保
2030年末に1ギガワット
380億ドル規模の設備投資

5年契約の計算枠

解約不可の5年契約
ASMLやCMA CGMが参画

主権と現実の差

中国GLM-5.2も提供
Web検索は域外経由もあり
Microsoftが主要顧客
詳細を読む

フランスのAI企業Mistral AIは8月11日、欧州のAI計算基盤を2030年末までに1ギガワット規模へ拡大する構想を発表しました。欧州の大手企業から複数年の計算利用契約を集め、その需要を担保にデータセンター投資を賄う仕組みで、2027年末には200メガワットの確保を目指します。あわせて、処理地域を欧州米国から選べる推論エンドポイントと、稼働率保証付きの上位プランも提供します。

構想の壁は資金です。同社の現在の容量は200メガワット未満で、稼働中の拠点はパリ近郊の44メガワット、スウェーデンの23メガワット、フランス・レジュリの10メガワットにとどまります。調査会社Epoch AIの試算では1ギガワット級のAIデータセンター約380億ドルの初期投資が必要とされ、これまでの調達総額約40億ドルとは桁が違います。

そこで持ち出したのが「欧州コンピュートユニット(ECU)」です。参加するのはASML、Amadeus、Capgemini、CMA CGMといった欧州の産業大手で、約5年分の計算能力を先に押さえ、推論・学習・モデル調整など用途は後から決められます。共同創業者兼CTOのティモテ・ラクロワ氏は途中解約について「抜ける道はない」と言い切り、電力購入契約に近い拘束力で融資の裏付けを作る狙いです。

主権をうたう一方で、線引きは現実的です。域内推論でも一部の処理は域外の再委託先に渡る場合があり、ラクロワ氏はWeb検索などのツール呼び出しを例に挙げたうえで、欧州で調達できない機能は無効化や利用制限で対応すると説明しました。さらに同社は中国Z.aiのGLM-5.2を皮切りに他社のオープンモデルも自社基盤で提供し、モデル提供者から欧州の信頼できる流通層へと立ち位置を移しつつあります。

最大の顧客は、皮肉にもMicrosoftです。7月に結んだ数十億ドル規模の提携で同社はMistral欧州データセンターから容量を借り受けており、Mistralは米ハイパースケーラーに設備を貸す側に回ることで投資リスクを下げています。ただしデータセンターを埋めるGPUの大半はNvidiaなど米国製で、独立性には契約では埋められない限界も残ります。

では、重みを無償公開するモデルでどう回収するのでしょうか。ラクロワ氏は、モデルが兆パラメータ規模に膨らみエージェント型の処理量が増えるなかで自社設備だけに推論を閉じ込めるのは難しくなると述べ、クラウド推論での収益化に賭ける考えを示しました。同社は約200億ユーロの評価額で30億ユーロ規模の追加調達を交渉中と報じられており、顧客を5年縛る以上、自らも長期の約束から降りられません。