Mastercard、AIエージェント決済向けに不正検知を再設計
不正検知ルールの転換
次の焦点は企業調達
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Mastercard で最高AI・データ責任者を務めるグレッグ・ウルリッチ氏は7月14日、カリフォルニア州メンロパークで開かれた VB Transform 2026 で、ボットの取引を止めるために積み上げてきたリスクルールを作り替える方針を示しました。AIエージェントが消費者に代わって買い物をする時代に入り、同社は「ボットは不正」という長年の前提そのものを見直す必要に迫られています。
カードがタップされるたび、同社は100ミリ秒以内に0から999までのスコアを付け、発行銀行へ渡します。昨年はこの判定を1750億件の取引に対して下しました。生成AIによってより多くのデータと文脈を取り込めるようになり、高リスク帯では不正取引の検知が300〜400%増えたとウルリッチ氏は説明します。同社の Safety Net はこれまでに700億件超の不正取引を止めています。
エージェント取引では、単発の決済ではなく権限の委任が起こります。何を意図し、どう振る舞い、どんな制約が与えられていたのかを識別できて初めて信頼が成り立つ。その考えから、同社は5つの層を組み上げました。第1が消費者とエージェントを結び付けて正規性を検証する「KYA(Know Your Agent)」、第2が元の指示を暗号技術で改ざん不能に記録する検証可能インテントです。
第3の層は、購入できる加盟店や金額の上限を定めるコントロールです。第4は実行基盤の Mastercard Agent Pay で、トークン化と認証、受け入れの枠組みを内包し、Microsoft や OpenAI、Googleなどと提供を開始しました。第5はリスクルールや同意に基づくインサイト提供、脅威情報の監視を担うインテリジェンスで、5層が揃って初めて委任型の取引が成立する設計です。
ウルリッチ氏がより大きな機会と見るのは、消費者向けよりも企業間の調達です。在庫水準を管理し、減れば自動で補充し、予算と承認済みサプライヤーを理解するエージェントを例に挙げました。調達側、供給側、銀行側のエージェントが互いに通信して自律的に動くには、身元と意図についての共通標準と、大規模な信頼基盤が要ると同氏は語ります。
社内では、ガードレールや監視を後付けせず最初から組み込んだエージェント工場と呼ぶ基盤を整えました。14か月前に4,000人のコンサルタント向けに作ったエージェント群も、今なら根本から設計し直すと同氏は率直に認めます。VentureBeat の調査では、全エージェントに固有のIDを割り当てている企業は32%にとどまり、識別の層が次の主戦場になりそうです。