湾岸諸国のAI野望、海底ケーブルの脆弱性が脅威に

集中するリスク

海底ケーブルが国際データの95%を伝送
ホルムズ海峡・紅海の少数ルートに依存
2025年に紅海で2本切断、35億ドルの損害
イランが海峡の全7本掌握を検討との報道

多層的な迂回戦略

陸上光ファイバー網をサウジ・UAE・オマーンに敷設
シリア経由SilkLinkに8億ドル投資
イラク経由WorldLinkケーブルに7億ドル
衛星は補完手段、容量とレイテンシに限界
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サウジアラビアやUAEなど湾岸諸国は、石油経済からAI駆動型経済への転換を急いでおり、数十億ドル規模のAIインフラ投資を進めています。しかし、その計算能力を世界に届ける海底ケーブルが、ホルムズ海峡と紅海という地政学的に不安定な航路に集中しており、戦略的な脆弱性となっています。

2025年には紅海で欧州と中東・アジアを結ぶケーブル2本が切断され、湾岸地域のインターネット接続が数日間にわたり劣化し、推定35億ドルの損害が発生しました。さらに2026年5月には、イランがホルムズ海峡を通る全7本の海底ケーブルの管理を検討しているとの報道が出ています。

ハイパースケーラー各社はAIインフラの運用に大量かつ継続的なデータフローを必要とし、大西洋・太平洋ルートと同等の冗長性を中東にも求めています。これに応じて湾岸諸国は多層的な対策を打ち出しています。サウジのStc Groupはシリア経由のSilkLinkに8億ドル、UAE・イラク企業連合はイラク経由のWorldLinkに7億ドルを投じ、海上のチョークポイントを迂回する新ルートを建設中です。

ただし、これらの陸上ルートは物理的な破壊に脆弱であり、シリアやイラクの政情不安というリスクも残ります。衛星通信は補完策として注目されていますが、帯域やレイテンシの制約から光ファイバーの代替にはなりません。湾岸地域は、国境を越える接続インフラが単なるデータ伝送手段ではなく戦略的資産であると認識し始めており、その対応は他のAI経済圏にとっても先例となる可能性があります。