パキスタン、裁判官専用AIで解決件数6.3%増

大規模実証の結果

判事1559人への提供
解決件数6.3%増
控訴率はむしろ低下

幻覚対策と研修

判例12万8千件のRAG接続
90分研修6回の実施
未研修層は1カ月で離脱

残る課題

約2割が過度な委任
司法の質は評価途上
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パキスタンの司法当局と経済学者チームは2024年から、全国の第一審裁判官1559人に判事専用の生成AI「JudgeGPT」を提供する大規模な実証を行い、導入した地区の中央値で解決件数が6.3%増加したと報告しました。判決の質に明らかな低下は確認されず、司法現場でのAI活用としては初の本格的な独立評価となります。

背景にあるのは深刻な処理の遅れです。パキスタンは226万件の未処理案件を抱え、人口10万人あたりの裁判官は2人未満と、EUの22人、ブラジルの8人を大きく下回ります。研究チームによれば、裁判官側はむしろ研究者より導入に前向きだったといいます。

ツールはOpenAIGPT-4に、パキスタンの判例12万8292件と法令943本を結び付けたRAG検索拡張生成)で構築されました。市販のチャットボットは現地の法律の問い合わせで判例を捏造することが多く、回答には出典へのリンクを付ける設計にしています。共著者でETHチューリッヒのエリオット・アッシュ氏は、幻覚を抑える鍵は賢いモデルより検索と出典の検証だと指摘します。

効果を左右したのは研修でした。90分のオンライン講義を6回受けた1197人は平均56回ログインし212件のプロンプトを送った一方、一般的な技術研修だけの180人は10回のログインと25件にとどまり、研修なしの層は約1カ月で利用をやめています。技術を配るだけでは定着しないという実務的な教訓です。

質の検証では、同じ裁判官の研修前後の判決文をGPT-5-miniに比較させ、研修後が選ばれた割合は59%でした。現地の弁護士2人による評価とAIの一致率は70.6%で、弁護士同士の73%に近い水準です。研究チームは訓練を受けた裁判官が月38.5件多く処理し、運用費1ドルあたり38.5ドルの司法コスト削減に相当すると試算しています。

一方で課題も残ります。プロンプトの約2割は最適な判断や法的推論をAIに委ねる「実質的な委任」に当たり、研修でその比率は下がったものの解消はしていません。ラトローブ大学のジョン・ゼレズニコフ教授は、処理は速くなっても司法の質が高まったかは不明だと述べ、研究チームも幻覚率は公表していません。