SpaceX初決算、AI投資約160億ドルで株価10%安

決算と市場反応

売上78億ドルで92%増
AI投資約160億ドルで前期比2倍
株価10%安、IPO後高値から半減

事業構成の逆転

宇宙事業は売上の約1割
Starlink売上42億ドル
営業黒字は通信事業のみ

拡張計画とリスク

27年末に10GW級の計算能力
年内ARR1000億ドル目標
詳細を読む

イーロン・マスク氏が率いるSpaceXが8月4日、上場後初となる四半期決算を発表しました。売上高は78億ドルと市場予想の68億2000万ドルを上回り前年同期比92%増、純損失も5億4100万ドルと21億ドル超とされた予想を大きく下回りました。それでも翌5日の株価は一時10%下げ、AI向け設備投資が前四半期の2倍となる約160億ドルに膨らんだことが投資家の警戒を招いています。

決算が映し出したのは、ロケット企業というより計算資源の貸主としての姿です。宇宙事業の売上は10億ドルに届かず全体の1割強にとどまり、衛星通信のStarlinkが42億ドルで、営業損失を出さなかった唯一の部門でした。データセンターを貸し出すコンピュート事業はロケットを上回る売上を稼ぎ、設備投資でも宇宙・通信が各10億ドル強なのに対しAIだけで158億ドルを投じています。

この構図は当初の計画ではありませんでした。マスク氏はGrokの学習用にメンフィスのデータセンター「Colossus 1」を建てましたが、xAI側が遅延や新旧チップ混在によるボトルネックで使いこなせず、外部への賃貸へ切り替えた経緯があります。決算説明会でマスク氏は、今後構築する計算資源のうちGrokに回すのは1割程度だと述べ、GoogleAnthropic、Reflection AI、買収したCursorとの契約を挙げました。

投資計画はさらに膨らみます。マスク氏は計算能力を今年末の2GWから2027年末までに「5GWより10GWに近い」水準へ引き上げる方針を示し、今後のインフラ整備ではNvidiaハードウェアに一本化すると明言しました。1GW増設するごとに数百億ドル規模の費用がかかり、上限想定では2027年末のデータセンターニューヨーク市の夏のピーク需要に匹敵する電力を消費する計算になります。

収益面では、最高財務責任者のブレット・ジョンセン氏が年末までに年換算売上高(ARR)1000億ドル超に達し、その大半をクラウド事業が担うと説明しました。一方でS&P;グローバルのメリッサ・オットー氏は「投資家がさほど乗り気でなかったのはAI部門の設備投資額だ。野心的すぎる」と指摘します。コンピュート貸しはCoreWeaveやNebiusと同じ土俵であり、機材の陳腐化や価格競争にさらされる資本集約型の事業でもあります。

目先の需給も重くのしかかります。SpaceXは6月のIPOで860億ドルを調達しましたが、株価は上場直後の高値225ドルから112ドルへほぼ半減し、8月6日には内部関係者のロックアップ解除が始まります。最大100万基の衛星による軌道上データセンター構想もFCCに申請済みですが技術的な詳細は乏しく、経営陣が語る壮大な構想と足元の資本負担のギャップをどう埋めるかが問われています。