Instacart、AIで技術的負債を気にせず開発
詳細を読む
食品宅配大手Instacartの最高技術責任者(CTO)Anirban Kundu氏は、2026年7月開催のイベント「VB Transform 2026」で、同社の開発現場では97%のケースでエンジニアがコードを読まなくなったと明かしました。反復的で負担の大きい作業はAIエージェントに任せ、人間は判断や例外処理といった付加価値の高い仕事に集中すべきだと主張しています。結果として、同社は技術的負債をもはや気にしていないといいます。
AIエージェントはコード生成や定型処理の大半を担い、特に新しいプロジェクトでは週次でコードが生成・再生成されます。使われなくなった機能は削除され、必要に応じて作り直されるため、負債が蓄積しにくい仕組みです。Kundu氏はこれを、かつてアセンブリコードやオブジェクトコードを扱っていた時代になぞらえました。
AI化が100%に届かない残り3%は、レガシー資産やコンプライアンス、遅延に敏感なシステムなど、人間の慎重な対応が必要な領域です。同社は「Atoms」と名付けたプロジェクトでこれらを分解し、よりモジュール化された形へ再構築しています。巨大なモノリスから、RPC(遠隔手続き呼び出し)主導のアーキテクチャへの移行を進めています。
AIがコードを書く時代には、従来のコードレビューの価値は下がります。そこで同社は、開発者が各モデルに適切な問いを投げる「意図モデル」への転換を図り、評価は独立して実施します。自動評価は月およそ7000件、リアルタイムの開発者からの問い合わせ8000件超に約99.9%の精度で応答しているといいます。
同社は自社の過去の障害と原因分析データで訓練した、エージェント型のSRE(サイト信頼性エンジニアリング)システムも構築しました。汎用的な障害データではなく自社固有の壊れ方を学ばせた結果、本番障害の検知・軽減精度は約60%から90%超へ向上しました。社内ツール「Blueberry」は200以上のSlackチャンネルを監視し、あるインシデントではAWSのディスク不調に人間が気づく前に原因を特定しました。
今後エンジニアに求められるのは、評価プロセスの設計や複数実験の調整、エッジケースの見極めといった、AIシステムを使いこなす役割だと同氏は語ります。ドメイン知識も、特定チームに集中させるのではなく仕様や定義へ埋め込み、コードを組織横断で民主化する方向を目指しています。