グラフェン「タトゥー」で植物が水分センサーに
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テキサス大学オースティン校の研究チームが、植物の葉に直接貼り付けられるグラフェン製センサーを開発しました。このセンサーは葉の水分量をリアルタイムで測定でき、農業や森林管理での活用が期待されています。研究成果は2026年2月に学術誌Nano Lettersに掲載されました。
従来の葉の水分測定は、葉を切り取る必要があり、時間がかかるうえにリアルタイム測定ができませんでした。新開発のセンサーは、グラフェンチャネルと金電極、葉そのものを誘電体とする三端子トランジスタ構造で、電気パルスを送ることで葉内部のイオン移動を通じて含水量を即座に計測します。グラフェンはほぼ透明で伸縮性があるため、光合成を妨げず葉の成長にも追従できます。
この研究の独自性は、センサーが水分計測だけでなく人工シナプスとしても機能する点にあります。特定の電気パルスでコンダクタンスを微調整でき、パルス終了後も約90秒かけて元に戻る短期記憶的な特性を持ちます。この性質を利用すれば、ニューラルネットワークの重みをセンサー上で保持・更新することが可能になります。
研究チームはすでに単層パーセプトロンを訓練し、センサーの読み取り値から葉の状態を「十分な水分」「通常」「干ばつ」に分類する実験に成功しました。現時点では外部ハードウェアで処理していますが、将来的には植物上で直接ニューラルネットワークを動作させることを目指しています。
研究を率いるJean Anne Incorvia准教授は、葉のセンサーを土壌や樹液のセンサーと組み合わせた「木々のニューラルネットワーク」を構想しています。農家が気候変動による干ばつをモニタリングしたり、森林管理者が山火事の危険を即時に把握したりする用途が見込まれます。植物そのものをコンピューティング基盤に変えるという、バイオエレクトロニクスの新たな可能性を示す研究です。