Shift、無料の出張料理と引き換えにロボット学習データ収集
無料サービスで収集
不足する学習データ
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米国の技術メディアWiredの記者が2026年7月30日、自宅アパートに無料の出張シェフを招き、その調理の一部始終をロボットの学習データとして記録される体験を報じました。シェフを派遣したのはドイツのスタートアップMicroagi傘下のShiftで、無料サービスと引き換えに家庭内の作業映像を集める仕組みです。帽子のつばに取り付けた小型カメラが、包丁さばきなどの手の動きを一人称視点で撮影しました。
Shiftは今年、ニューヨークで無料の清掃サービスを提供して注目を集め、サンフランシスコでは無料の家庭料理へと対象を広げました。狙いはエゴセントリックデータ、つまり人間の手の動きを一人称で記録した映像を大量に集めることにあります。MicroagiのBercan Kilic最高経営責任者は、人々がAI経済に参加できるようにすることが目的だと語ります。
なぜ企業が一日分のシェフ代を負担してまで映像を欲しがるのでしょうか。大規模言語モデルがインターネット上のテキストを収集して性能を高めたのに対し、ロボット向けの一人称映像にはそれに匹敵する巨大な蓄積が存在しません。家庭の内部と、そこで作業をこなす手順そのものが希少な資源になっているのです。
今回のシェフはガスパチョから焼いた鮭、ティラミスまでを調理し、そのまま台所の片付けまで行いました。料理だけを覚えたロボットが汚れた鍋を残していては意味がなく、清掃データの収集も同じくらい重要だという判断です。Kilic氏は来年の今ごろには手頃な価格でかなり良い家庭用ロボットが手に入ると予測し、2020年ごろのロボット掃除機になぞらえています。
一方で記者は、刃物を扱う機体が誤作動した場合の危険性を懸念しています。掃除ロボットの失敗が床の汚れで済むのに対し、調理ロボットの暴走は人やペットを傷つけかねません。データ提供の報酬も薄く、豊かさが広がるという約束が本当に格差の縮小につながるのかは見通せないままです。