天文学者がCodexでブラックホール計算を高速化

研究の壁

プラズマ粒子の螺旋運動計算
極小タイムステップの負荷
数十年来のシミュレーション限界

AIの活用

Codexが候補アルゴリズムを導出
検証可能な数値手法の提案
誤りも試験で排除

今後の展望

数兆粒子の計算可能性
未踏の物理現象の解明
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アリゾナ大学のチー・クワン・チャン研究員が2026年6月11日、OpenAICodexを用いてブラックホール周辺のプラズマを模擬する新たな計算アルゴリズムを導出していると明らかにしました。従来の手法では極端な物理現象を現実的に再現できず、数十年にわたり研究の壁となってきた課題に、AIで挑む取り組みです。

チャン氏は、史上初のブラックホール画像を2019年に公開した国際協力プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」の一員です。チームは現在、M87銀河中心の超巨大ブラックホールを対象に、初の動画制作へ向けた観測を進めています。観測を科学的理解に変えるには、膨大なデータ処理と極限の物理を扱うシミュレーションが欠かせません。

最大の難所が、ブラックホール周辺のプラズマのモデル化です。高温で希薄な領域では電子とイオンがほとんど衝突せず、磁力線の周りを螺旋状に回ります。この運動を正確に追うには微小なタイムステップが必要で、世界最速のスーパーコンピューターでさえ、本来調べたい大きな挙動より粒子の細かな動きの計算に時間の大半を費やしてしまうのです。

そこでチャン氏は、粒子の運動を数学的に変換し、細かな螺旋を直接追わずに済む新手法に着目しました。手作業ですべての可能性を探るには膨大な時間がかかるため、Codexに候補アルゴリズムの導出と既知解との照合を任せたのです。生成された手法には誤りも多く含まれますが、検証可能であれば問題ないと同氏は言います。

Codexの特徴は、結論だけでなく数値手法そのものを提示し、研究者が検査・試験・物理的理解できる点にあります。「アインシュタインや優秀な学生、AIモデルから出た案だから受け入れるのではない。繰り返し試験して初めて受け入れる」とチャン氏は強調しました。検証と再現性に根ざす科学こそ、現在のAIの最良の用途の一つだとの見方です。

もしこの手法が成功すれば、ブラックホール周辺の数兆個の粒子を模擬できるようになる可能性があります。それは数十年にわたり手の届かなかった物理現象の解明につながると、同氏は期待を寄せています。