Decartが写実的な運転シミュレーション用世界モデルOasis 3を公開
詳細を読む
AIスタートアップのDecartは2026年6月10日、写実的な運転環境をリアルタイムに生成するインタラクティブな世界モデル「Oasis 3」を発表しました。自動運転車メーカー向けに希少な走行シナリオを大規模にシミュレーションすることを主な用途とし、今後はロボティクスなど物理AIへの展開も予定しています。APIは初日から公開され、価格は1秒あたり0.02ドルです。
Oasis 3は同社の基盤モデル「Lucy」をベースに開発されました。前方1台・側方2台のマルチカメラ構成で物理的に正確な環境を生成し、時間制限なく無限にシナリオを拡張できる点が特徴です。自動運転開発者にとっては、限定的なデモではなくエッジケースを際限なく試行できることが大きな利点となります。同社の垂直統合型最適化スタック「DOS」により、競合他社より1桁以上低いコストでモデルを運用できるとCEOのDean Leitersdorf氏は説明しています。
一方で技術的な課題も残っています。テスト記事によれば、初期シーンはプロンプト通りに高品質で生成されるものの、走行を続けるとテーマの整合性が急速に崩れ、都市の特徴が汎用的な風景に変化してしまいます。他の車両をすり抜けるなど物理シミュレーションの正確性にも問題があり、Leitersdorf氏はこれを「現在取り組んでいる重要な研究課題」と認めています。自己回帰的に1フレームずつ生成する構造上、コンテキストウィンドウが急速に埋まることが根本原因です。
競合環境は激化しています。GoogleのGenie 3、Fei-Fei Li率いるWorld Labsの「Marble」、LumaやRunwayなどが世界モデル市場に参入しています。Decartは数週間前に3億ドルの資金調達を完了し、評価額は約40億ドルに到達しました。Toyota、Adobe、eBayが戦略的投資家として参加し、既存投資家のNVIDIAも出資しています。
Leitersdorf氏は、APIを開放することでLLM黎明期のOpenAIのように開発者エコシステムが自然発生的に成長すると期待を示しています。既に10万人超の開発者がeコマースやライブストリーミング分野でLucyを活用しており、Oasis 3で物理AI領域への拡大を狙います。世界モデル分野はまだ初期段階にあるものの、開発者による予想外のユースケース創出が技術の進化を加速させるというのが同社の見立てです。