Mistral AI、産業AIに本格参入し消費者向け助手をVibeに刷新
詳細を読む
フランスのAIスタートアップMistral AIは2026年5月28日、パリで初の自社カンファレンス「AI NOW Summit」を開催し、産業向けAI事業への本格参入、パリ南部での新たな推論用データセンター建設、消費者向けアシスタントの刷新を発表しました。共同創業者兼CEOのArthur Mensch氏は「AIプロバイダーとしてフルスタックを所有する必要がある」と語り、アメリカの大手クラウド企業に機密データを預けたくない企業の受け皿となる方針を明確にしています。
産業AI分野では、5月に買収したEmmi AIの物理シミュレーション技術とLLMを統合した「Mistral for Industrial Engineering」を発表しました。Airbusとは商用航空機から宇宙部門まで全事業で協業し、BMWは衝突シミュレーション向けの「Large Industry Model」構想でMistralを中核パートナーに選定。最大株主でもあるASMLは、リソグラフィ装置の故障診断にMistralのモデルを導入し、従来と同等の精度で120倍の高速化を達成したと報告しています。
インフラ面では、40億ユーロ規模の「Mistral Compute」計画のもと、フランスとスウェーデンにデータセンターを建設中です。既存のパリ南部40MW施設に加え、2026年第3四半期に推論専用の新施設(10MW)を開設予定。2030年までに1GWの容量を目指します。資金は7行の銀行団による8億3000万ドルのデット・ファイナンスなどで確保しています。
消費者向けアシスタント「Le Chat」はVibeに改称され、企業の生産性ツールとコーディングエージェントを統合したプラットフォームへと進化します。Google WorkspaceやSlack、GitHubと連携し、メール要約やコード修正を一貫して処理できます。料金は無料プランからPro月額14.99ドル、Teams月額24.99ドルまで。モデル戦略ではPixtralやMagistraleなど個別製品を廃止し、旗艦モデルMistral Medium 3.5に機能を集約する方針を示しました。
Mistralは現在従業員1,000人を擁し、2026年の売上目標を10億ユーロ(約13.7億ドル)に設定しています。BNP Paribasでは本人確認プロセスの不備率を80%から10%に削減、フランスやシンガポールなど各国政府との協業も進めています。オープンウェイトモデル、自社インフラ、オンプレミス展開、物理シミュレーション、垂直特化のカスタマイズをすべて一社で提供する戦略で、OpenAIやAnthropicとの差別化を図ります。