ChatGPTの嘘で試験落第、著名人が語るAIの罠
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米国の著名タレント、キム・カーダシアン氏が、弁護士資格取得の勉強で使ったChatGPTから誤った情報を教えられ、試験に落第したと告白しました。この出来事は、生成AIがもっともらしい嘘をつく「ハルシネーション」という課題を浮き彫りにします。AIを事業に活用するリーダーやエンジニアにとって、そのリスクと適切な向き合い方を考える上で示唆に富む事例と言えるでしょう。
カーダシアン氏はインタビューで、ChatGPTを法律に関する質問に利用しているものの、その回答は「いつも間違っている」と指摘。「私を試験に落第させた」と語り、AIとの関係を「frenemy(友であり敵)」と表現しました。AIに感情的に訴えかけることもあるそうですが、AIには感情も自己認識もないため、これはAIの特性を理解していない使い方と言えます。
なぜこのような問題が起きるのでしょうか。それは、ChatGPTのような大規模言語モデル(LLM)が、情報の「正しさ」を判断しているわけではないからです。LLMは膨大なデータから単語のつながりを学習し、質問に対して最も統計的に「ありそうな」回答を生成します。そのため、事実に基づかない、もっともらしい嘘(ハルシネーション)を生成してしまうことがあるのです。
この問題は専門家の間でも深刻です。過去には、米国の弁護士が訴訟準備書面の作成にChatGPTを利用した際、存在しない架空の判例を引用してしまい、裁判所から制裁を受けた事例も報告されました。専門知識が求められる領域ほど、AIが生成した情報のファクトチェックを怠るリスクは計り知れません。
カーダシアン氏の逸話は、AIを使いこなしたいと考える私たちに重要な教訓を与えます。AIは強力なツールですが、その出力を鵜呑みにするのは危険です。特に、正確性や倫理性が問われる業務では、最終的な判断と検証は必ず人間が行うという原則を忘れてはなりません。AIの限界を理解し、賢く付き合っていく姿勢が求められています。