「ヒューマノイド五輪」提唱、実用化への挑戦状

現行技術が抱える限界

デモンストレーションからの学習が主流
力覚フィードバックの欠如
指先の細かい制御が困難
人間並みの触覚センサーが未搭載

5つの実用的な挑戦課題

ドア開閉と全身協調
洗濯物の複雑な取り扱い
道具の力強い・器用な使用
水回りでの濡れた物体の操作
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ロボット工学者のベンジー・ホルソン氏が、ロボットの器用さと操作能力の限界を押し上げるため、新たな競技会「ヒューマノイド・オリンピック」を提唱しました。日常生活に即した5つのタスクを通じて、現在の技術的課題を浮き彫りにし、真に実用的なロボット開発を加速させることが狙いです。成功者には実物のメダルが授与されるとしています。

この提案の背景には、既存のロボット競技への課題意識があります。ホルソン氏は、単なるエンターテイメントではなく、洗濯や掃除といった実生活で役立つ能力こそが重要だと指摘。現在の主流である「デモンストレーションからの学習」という手法だけでは、汎用的なタスクの実現は難しいとして、新たな技術開発の必要性を訴えています。

現在のロボット技術には明確な限界が存在します。人間による遠隔操作データに頼るため、力覚のフィードバックや繊細な指の制御、人間のような触覚が欠けているのです。これにより、タスクの精度は数センチ単位にとどまり、複雑な作業の完全自動化を妨げる一因となっています。

そこで提案されたのが5つの競技です。「ドアの開閉」「洗濯」「道具の使用」「指先での操作」「水回りの作業」といった、日常生活に根差したタスクが並びます。これらは、現在のロボットが苦手とする力加減や全身協調、濡れた物体の扱いなど、具体的な技術課題を克服するマイルストーンとして設定されています。

例えば「道具の使用」では、ピーナッツバターを塗るためにナイフを強く握り直す動作や、鍵束から正しい鍵を選んで鍵穴に挿すといった、高い精度と力が同時に要求されます。また「洗濯」では、裏返しのTシャツを元に戻して畳むなど、複雑な手順が求められます。これらはロボットハンドの設計や制御アルゴリズムに革新を迫る課題です。

ホルソン氏は、これらの課題をクリアしたチームに実物のメダルを授与すると宣言し、世界中の研究開発コミュニティに参加を呼びかけています。このユニークな挑戦は、ロボットが真に汎用的で役立つ存在になるための、具体的かつ刺激的なロードマップとなるのでしょうか。今後の動向が注目されます。