画像生成AIの悪用、偽造領収書で経費不正が急増

生成AIによる不正の現状

画像生成AIで領収書を偽造
不正書類の14%がAI製との報告
90日で100万ドル超の不正請求も
財務担当者の3割が不正増を実感

偽造の手口と対策

テキスト指示だけで数秒で作成可能
専門家も「目で見て信用するな
経費精算システムのAI検知が重要
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画像生成AIの進化が、企業の経費精算に新たな脅威をもたらしています。欧米企業で、従業員がOpenAIGPT-4oなどのAIを使い、偽の領収書を作成して経費を不正請求する事例が急増。経費管理ソフト各社は、AIによる不正検知機能の強化を急いでいます。これは、テクノロジーの進化がもたらす負の側面と言えるでしょう。

不正の規模は深刻です。ソフトウェアプロバイダーのAppZenによると、今年9月に提出された不正書類のうち、AIによる偽造領収書は全体の約14%を占めました。昨年は一件も確認されていなかったことからも、その増加ペースの速さがうかがえます。フィンテック企業Rampでは、新システムがわずか90日間で100万ドル以上の不正請求書を検出しました。

現場の危機感も高まっています。経費管理プラットフォームMediusの調査では、米国英国の財務専門家約3割が、OpenAIの高性能モデル「GPT-4o」が昨年リリースされて以降、偽造領収書の増加を実感していると回答。新たなAI技術の登場が、不正行為の明確な転換点となったことが示唆されています。

生成される領収書は極めて精巧で、人間の目での判別はほぼ不可能です。世界的な経費精算プラットフォームであるSAP Concurの幹部は「もはや目で見て信用してはいけない」と顧客に警告を発しています。同社では、AIを用いて月に8000万件以上コンプライアンスチェックを行い、不正の検出にあたっています。

なぜ、これほどまでに不正が広がったのでしょうか。従来、領収書の偽造には写真編集ソフトを扱う専門スキルや、オンライン業者への依頼が必要でした。しかし現在では、誰でも無料で使える画像生成AIに簡単なテキストで指示するだけで、わずか数秒で本物そっくりの領収書を作成できてしまうのです。

AI開発企業も対策を進めています。OpenAIは、規約違反には対処し、生成画像にはAIが作成したことを示すメタデータを付与していると説明します。しかし、悪意ある利用を完全に防ぐことは困難です。企業はもはや性善説に頼るのではなく、AIを活用した検知システムの導入が喫緊の課題となっています。